ロサンゼルス国際空港に到着したドナルド・トランプ大統領(2019年9月17日、写真:AP/アフロ)

屈指のテレビ批評記者がトランプ論

 新刊書の評価では定評のある『パブリッシャーズ・ウィークリー』誌が今秋、最もエキサイティングな政治関連書籍ベストテンの一冊に挙げた本がある。

 ニューヨーク・タイムズのテレビ批評担当記者、ジェームズ・ポニウォズック氏が書いた『Audience of One: Donald Trump, Television, and the Fracturing of America』だ。

 訳せば『一人の聴衆:ドナルド・トランプとテレビと砕ける米国』。

「Audience of One」とは、聴衆全体に話しているのだが、実際にはその中の一人だけに語りかけているという意味だ。

 言語学専攻で博士課程の米大学院生によると、「Audience of One」という表現は最近、かなり流行っているという。

 例えば、大統領に閣僚に指名された人物が人事承認で上院委員会で宣誓証言するとする。

 その時、この人物は各委員の質問に応答してはいるのだが、実際には大統領一人に対して自分の忠誠心を訴えている。

 相手は大統領一人、という意味らしい。

 著者が付けたタイトルは、「大統領閣下、あなた宛てのメッセージですよ」ということになりそうだ。

 トランプ関連本は、厳しい批判だらけのものからおべんちゃらのオンパレードのようなものまで、今や馬に食わせるほど出ている。

 ついこの間までトランプ政権内部にいた人間やトランプ氏を追いかけてきたジャーナリストによる暴露本まである。

 そうした中でテレビ目線で検証したポニウォズック氏の「トランプ論」はちょっと異質だ。