モデルは小柄なため、オフィスチェアで「いい座り方」をすると足が地面に着かなかった。そういう場合は、踏ん張っても大丈夫な硬さの踏み台になるものを置いて調節しよう。足がブラブラしていたり、逆に膝が腿より高い状態になっていたりすると、どこかが力んでしまう。

「いい姿勢」は、背筋を伸ばすことではない

 ここまで読んで自分の「悪い座り方」に気付いたあなたは、坐骨の位置を気にしながら着席されただろう。そのついでに背もたれを直角に調整したり、あごを引いてぐっと胸を張ったりしていないだろうか?

「正しい姿勢とか、ちゃんと座ってと意識をすると、胸を張ったり背中を反らせたりしますよね。これは写真うつりはいいかもしれないけど、いろんなところに力が入っているでしょう。必要のない場所が緊張していると、動かしたり支えたりする時にかなりパワーを使うことになって、すぐに疲れてしまいますよ」

「正しい座り方」は、「疲れない座り方」。吉井さんは、骨盤に背骨がしっかり乗った状態で座っていれば、あとはリラックスして大丈夫だと言う。そういえば、学校でも家庭でも「気を付け!」「ちゃんとした姿勢で」と言われると、体にぐっと力を入れて、ピーンと背筋を伸ばすことだと思っていた。背骨に負担のかからない姿勢というのは教えられたことがない。

 最近は、良かれと始めたスクワットやストレッチ、ヨガやスポーツなどで体を傷めて来院する人も増えているそうだ。

「運動でも筋トレでも、正しくやらないと怪我のもとです。雑誌で読んだ、テレビで見たくらいでは何が正しいのかはよく分からないことが多いと思います。それなのに、良かれと思っているから、多少痛みを感じてもがんばってしまう人が多い。痛みを感じるのは危険のサインで、『悪いこと』です。痛いと感じたらすぐに止めること。信頼できる指導者に付くのが近道です。僕も『いい座り方』を紹介しましたが、よくわからないな、という人は無理してやろうとせず、まずは『悪い座り方』を止めることから始めてほしいと思います」(吉井さん)

 悪い姿勢や習慣を止める「引き算」でセルフメンテナンスはできる。力みのない、疲れにくい体づくりを目指したいものだ。