老人ホームを訪ねたドイツのアンゲラ・メルケル首相(2018年7月16日、写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 誰が主治医なのか――。

 進行性の乳がんを患う60代後半の女性と話していて疑問に思った。彼女は有料老人ホームに入局、併設されているクリニックの医師の訪問診療を定期的に受けている。

 それに加え、月に一度、別の病院の乳腺外科の外来で抗がん剤治療を受けている。

 どちらの医師に対しても、「先生にお任せします」と伝えており、「先生たちがいいようにやってくれている」と信じている。

 しかし、彼女は不安に思うことがあった。

 乳がんの専門医を受診する際には、定期的に血液検査を受け、プリントアウトされた結果が渡される。それを訪問診療の医師に採血結果を見せた。

 その医師は、「(肝臓の障害の程度を示す)ASTが少し高めですね。薬を飲んだ方がいいかもしれません。何か聞いていませんか。」と言ったそうだ。

 乳がん専門医からは、採血結果について何も言われておらず、内服薬の変更も指示されていない。

 彼女は医師と会うと緊張してしまい、訪問診療の医師の指摘について不安に思うことを打ち明けることができない。一人で不安と付き合うことになった。