同博士はスタンフォード大学フーバー研究所の研究員だ。日本でもお馴染みの中道保守派のアジア外政学の研究者だ。

「これは前例のない事件だ。インド太平洋地域の平和を脅かす危機が存在することを改めて思い起こさせる事例の一つだ」

「さらにキショア・マブバニ*1、やマーチン・ジャクス*2らが主張していた『アジアの世紀』は意外と早く終焉する可能性を示唆する事件だ」

*1=マブバニ氏はシンガポールのリー・クワンユー公共政策大学院院長。
*2=ジャクス氏は英ジャーナリスト。

 言い換えると、同博士は、米国防総省が今年6月1日に公表した『インド太平洋戦略報告書』(IPSR)が打ち出している米戦略構想は早くも崩れかねない状況になってきたと指摘しているのだ。

 同報告書は、米国は日米韓三角同盟とインド、オーストラリアとの同盟・連携を強化することで中国を牽制することが米戦略だと明言している。

 日韓の対立が長引けば、この米戦略も絵に描いた餅だ、というわけだ。

 オースリン博士のような主張は、トランプ政権の軍事外交政策を「現場」で遂行する軍や国務省の最高責任者たちからも出始めた。

 東アジア太平洋地域で中ロと対峙するチャールズ・ブラウン米太平洋空軍司令官は、7月30日、ワシントンで行った講演で強い懸念を示した。

「ロシア軍と中国軍が協力し、連携して活動を始めていることを懸念している。日米韓3か国の関係にくさびを打ち込む狙いがある。米国と同盟国にとっては一段と厳しい環境になってきた」

 国務省からも同博士に同調する声が出始めた。