会社も社員も成長する会社は、仲間は大事にしますが、それを一番に掲げることはしません。仲間の意味も違います。サッカーにたとえるなら、これから勤めるべき企業は、サッカーが好きな同好会レベルではなく、お互いが一流のプロとして自立(技術の高みを目指す態度)と自律(他者との関係性を踏まえ、セルフコントロールする態度)を兼ね備えた日本代表です。仲間内の世界では自立も自律もできません。

「子供の組織」ではなく「大人の組織」に身を置かないと、飼い殺しになり、その会社で一生を終えるしかなくなります。

 確認する方法は簡単です。仲間以外の売りを聞き、その裏を聞けばいいのです。

「自由な組織が売りです」→「権限はどこまで任されますか?」

「活躍すればドンドン昇進するよ」→「管理職以上の就任時の年齢と在職期間の平均を教えていただけますか?」、「役員は全員オーナーの親戚関係ですか?」

 など、裏を取れば、実態が見えてきます。

使い捨て組織の見切り基準

 右肩上がりで急成長。一見いい会社に見える会社にも罠が潜んでいることがあります。次のキャリアに繋がらず、キャリアの墓場になる会社もあるのです。

 注意すべきはビジネスモデルです。頭がいい人が、誰でも売れるようにパッケージングをした製品やサービスを、人海戦術で新規中心に営業ばかりさせるようなビジネスモデルは危険です。成長期のようで実は安定期。このような、いくらでも人の替えが効くモデルで成長する企業はどんどん組織が大きくなり椅子が増えていても、辞めたほうが賢明です。歯車として消耗品になるだけです。

 本人が気づかぬうちにその社風に染められ、ガッツと根性でパッケージを売ることしかできなくなります。ただ表からはそうは見えないように偽装しています。代表的な手口を解説しましょう。

 パッケージ販売ではなく「ソリューション」や「カスタマイズ」を謳っていますが、実態はちょこっとだけ資料を書き換えるだけ。お客様の会社名に書き換え、内にある資料をコピペするだけです。

 ここを見破るのは簡単です。「提案資料を作成するのに平均どれくらい時間がかかるのですか?」と聞けばいいです。「数分。長くて1時間はかかりません。わが社の社員は生産性が高いので」と言ってきたらアウトです。自らパッケージをコピペしていると白状していると一緒です。クライアントと信頼が厚く、覚書1枚程度を箇条書きすれば仕事が決まるなら話は別ですが、本当に一からクライアント向けの提案資料をつくるとなると、そんな短時間ではできないからです。

 もう一つ、マネジメントの仕方が違います。

 仕事が決まれば驚くくらい動機づけします。拍手を浴び、大きな声で「やった!」と大げさな舞台役者のようなリアクションをすることがあります。

 そう、ある意味、宗教団体のようなのでリファーラルなど、外からみれば一発で見抜けますが、行動科学などの心理的なアプローチを巧みに使うので、中に入るとすぐに染まります。「わが社は選ばれし優秀な社員だ」と動機づけを行う。「経営者やキーマン以外は会っても無駄だ!」と断られてもチップアプローチを繰り返す。夜中まで働いたり、経営者としか会わないので学生時代の友達や他社のビジネスパーソンとあっても話が合わない、社内の身内中心のコミュニティとなっている。結果、凄い実力がついてコンサルティングできる、と錯覚させる。

 売り上げに応じてえインセンティブが入り、すぐ出世するが、売り上げが落ちると一瞬で降格する仕組みで人の新陳代謝を促すことがマネジメント面の特徴です。ビジネスモデルの実態を冷静にみても分かります。ITと言っているが開発は外注でコンサルタントやプロデューサー、コーディネーターという名前の営業が9割を占める。派手なメディア露出が多いことも挙げられます。

 ここに嵌ったら大変です。余計なことを考えずパッケージに沿ってリミッターなく売り歩くロボットにしかなれません。その通りにやると中途半端に出世し、プライドが高くなるので次がなくなります。退職しても次が見つかりやすいように、やたらと社内で営業コンペを実施し、社内表彰No.1の称号を大量に社員にばらまきます。こうなると他社とアライアンスや新規のビジネスをローンチする資質を持っていても、そちらを封印されてしまうくらい、いけいけドンドンの資質を鍛えられてしまうのです。「あの会社出身の営業は凄い」という評判があるので、新規ビジネスのローンチや他社とのアライアンスを任せてみたら、ぐちゃぐちゃになる、なんていう悲劇はよくあることです。

 この手の会社は組織も成長し、若くても出世しますが、退職率が多いのも特徴です。

 面接ですぐにカリスマ的な社長やエースの先輩が出てきて、「君なら活躍できる」とすぐに内定を出すのも特徴です。社長やその右腕しかこのビジネスモデルを描く側に回れないため、その根幹のノウハウをコピーすることは難しいです。仮に独立したり他社で同じからくりを立ち上げようとすると、法律に触れない範囲で脅かしてきたり、すぐ訴訟してきます。この手の会社に入るなら新卒で入り、骨を埋める覚悟で人生を過ごし、夢から覚めないようにするしかないでしょう。中途ならお勧めしません。

 営業仕事はお気をつけください。