そうであるとすれば、貿易赤字の規模に関係なく、米国が中国に対して感じる脅威は今後ますます強まっていく。

 米国は脅威を緩和するために貿易以外の様々な手段を用いる可能性が高いと見るのが自然であろう。これが今後の長期的な米中関係の基本構図である。

 そうした状況が続く中で、中国としては米国の同盟国である日本が中国と離反し米国追従の姿勢を強めることを何とか回避したいと考えるはずだ。

 足許の日中関係は安倍晋三総理、習近平国家主席両首脳の下、1990年代前半当時の良好な日中関係に近づきつつある。

 中国は日本以上にこの良好な日中関係を安定的に保持したいと考えていると見て間違いないであろう。

 日本としても米国との関係に十分配慮しながら、日中関係を一段と安定させることができれば、経済、外交両面で日本の国益を増進させる好機である。

 日中経済関係安定のための重要な土台となるのは中国各地における日本企業の投資環境である。

 最近は日本企業の誘致拡大に積極的な中国各地の地方政府が日本企業の投資環境改善要望に真摯に耳を傾ける姿勢を示している。

 日本企業に対する対応姿勢の改善ぶりは数年前には想像もつかなかったほど様変わりしたという話は現地駐在の日本企業・金融関係者などからしばしば耳にする。

 以下ではその具体例を紹介したい。