平壌でいま、米ドナルド・トランプ政権に対する本質的な変化が起こり始めている可能性がある。それはトランプ政権が、北朝鮮の「虎の尾」を踏んでしまったからだ。
5月9日、アメリカ司法省が、北朝鮮の貨物船「ワイズ・オネスト」を差し押さえたと発表した。理由は、国連の制裁決議で、石炭の輸出を禁じているのに、石炭を積んで遠洋に出ていたというものだ。また、米ドルの不正送金などで、アメリカ国内法にも違反したという。
外貨獲得のために活動していた貨物船
具体的には、アメリカ司法省のプレスリリースや、各国メディアの報道を総合すると、以下のようなことである。
・「ワイズ・オネスト」は、全長177メートル、1万7061トンの北朝鮮で2番目に大きい貨物船で、1989年に建造され、北朝鮮南部の南浦港を母港としている。船主は、平壌の朝鮮松茸貿易会社(権哲男代表)。同社のバックは、朝鮮人民軍で、同船を外貨獲得に使っていた。
・2017年8月の国連の経済制裁により、北朝鮮からの石炭輸出は禁じられているにもかかわらず、「ワイズ・オネスト」は、2018年3月14日頃、石炭2万6500t(300万ドル相当)を積んで、北朝鮮とシエラレオネの国旗を掲げて南浦港を出港した。
・同年4月2日頃、インドネシア警察の検査を受け、同国に抑留された。AIS(船舶自動識別装置)を作動させていなかったことや、領海申告を怠ったことなどが理由。
・同年7月17日、ニューヨーク州裁判所は、「ワイズ・オネスト」の差し押さえ令状を発行した。2017年6月1日に、OFAC(米外貨管理局)が朝鮮松茸貿易会社を、ドル金融システムの使用禁止リストに載せたにもかかわらず、この時の石炭輸出で75万ドル以上の送金を受けていたというのがその理由。
・インドネシアの裁判所は、「ワイズ・オネスト」の金ジョンソン船長に、無罪判決を言い渡した。だがアメリカの要求によって、現在「ワイズ・オネスト」は、米領サモアに向かっている。同船のアメリカの没収が実現すれば、アメリカが北朝鮮の貨物船を没収した初のケースとなる。
以上である。