JAXA角田宇宙センター所長である吉田誠氏は「ISTが壁に当たりながら果敢に取り組む姿に共感し、応援している。低コストロケットエンジンに関する研究でそれぞれ試験モデルを製作、試験を行って、結果を共有しフィードバックする。技術で貢献したい」と語った。

 ロケット心臓部のエンジンについて、半世紀以上の経験と技術を持ち、現在、JAXAの次世代主力ロケットH3のエンジン試験を実施中である同センターの協力を得られることは、ISTにとって強力な援軍であると同時に、JAXAにとっても低コストロケットエンジンは新しい研究分野。両者にとって貴重な機会になるはずだ。

 ユニークなパートナーには、ユーグレナが挙げられるだろう。出雲充社長は「国産のバイオジェット燃料が目前に来ているが、世界初のクリーンなミドリムシロケット燃料を必ず完成させます。飛行機だけでなくロケットも飛ばして、国連のSDGs(持続可能な開発目標)にかなった全く新しい燃料を、海外からではなく、日本から発信していきたい」と宣言した。稲川社長によると、まずは基礎研究を始め、ロケットエンジンに適用できるか試験をしていく予定とのこと。

 今や世界でもっとも注目される宇宙企業である米国スペースXも、2002年の創業後は数多くの失敗を繰り返した。だが、2006年にNASAと国際宇宙ステーション(ISS)への補給船サービスを契約。米政府が民間による商業打ち上げをサービス購入の形で支援したことで、同社は大きな成長を遂げた。「NASAから多くのことを学んだ」とイーロン・マスクCEOは、NASAや米政府への感謝を公言する。

 日本は、宇宙産業の市場規模を2017年の1.2兆円から2030年に倍増することを目指し、5年間で1000億円のリスクマネーを投入すると表明している。人工衛星や月着陸機だけでなく、宇宙活動の拡大に欠かせないロケットへの投資は、もっと加速してもいいはずだ。

 小型ロケットといえば、小型衛星打ち上げ用固体燃料ロケット事業を進めるスペースワン(IHIエアロスペースやキャノン電子などが設立)が、和歌山県に小型ロケット射場を建設することが3月末に発表された。近い将来、北海道から、和歌山から、民間による小型ロケットが次々と打ち上がり、今は想像もできないような宇宙の利用が始まることを期待したい。