原因究明と対策を施して2018年6月30日にMOMO2号機打ち上げ実験を行った。しかし発射4秒後にエンジンが止まり機体は落下、炎上。「不幸中の幸いだが、事故原因となった部分が残っていて、配管が溶けていたことを確認できた」(IST、稲川貴大社長)。調査の結果、新しく開発した姿勢制御用エンジンが設定範囲外で動作。高温のガスにより配管が溶け、機体の中に火が回り安全装置が働いて主エンジンが停止したことが分かった。
これまで社員約15名で開発を進めてきた同社は、2号機の失敗を受けて体制を変えた。JAXAや三菱重工業などで日本のロケット開発を担ってきた外部有識者4人による外部原因対策委員会を、初めて立ち上げたのだ。宇宙業界で「ロケット野郎」と呼ばれるそうそうたるメンバーに現地で現物や設計情報を見てもらい、事故原因だけでなく潜在的な不具合がないか、今後の対策についてもアドバイスをもらった。
「議事録が山のようになり、大変勉強になった。日本の液体ロケット開発初期には同じような失敗をさんざん経験し、エンジンを破裂爆発させたこともあるというお話を聞いて、とても心強かった」(稲川社長)
同委員会のアドバイスを受けてISTが初めて行ったのが、エンジン燃焼実験CFTだ。ロケットの実機を飛翔できる状態で地上に固定して、打ち上げ時と同じ2分間の燃焼実験を2回実施。実験は成功し、安全性を確認した。実は、これまで同社はロケット打ち上げを「実験」ととらえて、地上で出しきれない課題について地上実験を繰り返すより、実際に打ち上げることで洗い出そうという考え方をとってきた。CFTのような試験は打ち上げと同じくらいお金がかかるし、打ち上げた方が早く課題抽出できるというのがその理由だ。
稲川社長は「進め方を変えました。エンジン開発試験をきちんと固めようと思います。コストがかかっても試験を実施して、見られることは全部地上で確認した上で本番に挑もうと」と語る。3号機に『宇宙品質にシフト』と名前がつけられた背景には、こんな変化があったようだ。
年内に予定される打ち上げは、今度こそ成功? と聞くと「100%とは言えないが、これまでになくいいものに仕上がっている自信はある」と笑顔。成功すれば商業化を始めるという。