実例は、今年1月に打ち上げられたALE(エール)の人工流れ星放出衛星だ。JAXAイプシロンロケットで7つの衛星の1つとして打ち上げられたが、7つとも高度約480kmの軌道に運ばれた。そのため、自力で1年以上かけて、目的とする高度400km以下に降ろしてこなければならず、現在もまだ降下中だ。
つまり、宇宙活動をより多彩に活発化するには、超小型衛星を安く、早く、目的地に運ぶ「超小型衛星用の小型ロケット」が切実に求められているのだ。現在、世界中で小型ロケット開発を進めるスタートアップは約100社と言われるが、打ち上げに成功しているのは米国のRocket Lab(ロケットラボ)1社のみ。中国の零壱空間(ワンスペース)は3月27日、衛星軌道投入ロケット打ち上げに失敗した。
稲川社長は「ロケットベンチャー100社の中で、実現可能と思われるのは数社。開発競争の中で、我々は観測ロケットMOMO打ち上げ実験やZEROの基礎研究を既に進め、要素技術を持っている。大きく遅れておらず、きちんと開発できれば世界に負けないロケットを作ることができる」と自負する。
ZEROにJAXAはどう協力するのか?
人工衛星を打ち上げ用ロケットZEROは2段式の液体燃料ロケットだ。全長22m、直径1.8m。重量35トン。1回あたりの打ち上げコストは約6億円以下を目指す。新規開発で最も難しいのは、ロケット燃料をタンクからエンジンに送るターボポンプ。このターボポンプなどについて、JAXAの協力を得ることとなった。
拡大画像表示
具体的には、JAXAと民間企業が一緒に新事業を創出する「宇宙イノベーションパートナーシップ」(J-SPARC)の枠組みで活動を行う。JAXAのロケットエンジン研究開発拠点である角田宇宙センターを拠点に、ターボポンプ、噴射機、燃焼室の3本を柱に、幅広く共同研究を行う。角田宇宙センターはISTのエンジニアを受け入れる。