超小型衛星打ち上げロケットZERO開発――小型ロケット100社が切磋琢磨する現状

MOMO(右)とZEROの8分の1の模型を手にするIST稲川貴大社長。ZEROは、MOMOの約30倍の大きさでエンジン出力は約50倍。それだけ開発は難しくなる。

 MOMOは高度約100kmの宇宙空間に達するものの、地球の周りを周回することはできない。だから人工衛星を打ち上げるロケットには使えない。ISTが狙うのは、超小型衛星を低コストで打ち上げるロケット「ZERO」だ。

 ISTは、MOMO3号機の開発のめどが立ったことで、ZEROの開発にアクセルを踏むことを決断。だが、ZEROはMOMOの20~30倍弱のエネルギー量が必要であり、その開発は桁外れに難易度が高い。一社での開発は困難なことから、多くの法人の知見を得て一緒に開発を進めたいと「みんなのロケットパートナーズ」を始動させた。立ち上げにはJAXAや丸紅、ユーグレナなど8つの企業・団体が参加した。

 堀江貴文氏が出資していることから「ホリエモンロケット」とメディアで報じられることが多いが、「みんなのロケットに」とウェブで宣言したのは、ロケット開発に必要な設計、製造、運用、営業など各領域に知見を持ち、ミッションの重要性を共有する多くの企業や団体の力や資金を必要としているからに他ならない。その点、エンジン面でのJAXAの協力は心強いはずだ。

 その詳細を説明する前に、小型衛星打ち上げロケットの現状を紹介しておこう。

 電子部品などの技術の発達によって、人工衛星は小型・軽量化し、コストが安くなり、大量に製造されるようになった。超小型衛星大量時代の幕開けだ。アメリカの調査会社のリサーチによると、2018年に打ち上がった超小型衛星(50kg以下)は世界で約250機。今後5年間で打ち上げを待つ超小型衛星の数は2000~2800機と推察されている。

 その一方で、超小型衛星を打ち上げられるロケットは年間30本程度。圧倒的にロケットが不足している。また、ロケットへの衛星搭載にも課題がある。中・大型ロケットに衛星を、他の衛星と一緒に相乗りさせる場合、他の衛星の開発が遅れると打ち上げ時期が遅れたり、自分が到達したい目的地(軌道)に到達できなかったりする。