「平成」の元号は、1989年1月7日、首相官邸で、小渕恵三官房長官から発表された(写真:Fujifotos/アフロ)

 間もなく新元号が発表され、およそ30年続いた「平成」も終わりを告げようとしています。昭和のように戦争にも巻き込まれることなく、一見平穏だった30年間のように思えますが、実は大変な激動の時代でもありました。そこで改めて、平成という時代を振り返ってみたいと思います。

平成の三大構造変化

 平成には、3つの大きな構造変化がありました。

 1つは、戦後レジームの崩壊です。平成が始まった1989年は、ちょうどベルリンの壁が崩壊に向かう年でした。そこから、それまで厳然としてあった東西冷戦構造が一気に終結に動き始め、2年後には東側陣営のリーダーであるソ連までもが崩壊してしまいます。まさに戦後レジームは、平成の始まりとともに崩れ、その結果、アメリカ一強状態が現出しました。

 2つ目の構造変化は、中国の台頭です。日本で平成という時代が始まった頃の中国はといえば、国際政治や国際経済の舞台で、それほど影響力を持った存在ではありませんでした。確かに人口は多く国土も広く可能性を秘めた国ではありましたが、当時はまだまだ開発が進んでいませんでした。それが平成というわずかな期間に、目覚ましい発展を遂げていったのです。

 平成の初期、中国がここまで発展を遂げることを予想している人は多くはありませんでした。むしろ当時盛んに予想されていたのが、「日米欧三極体制」の出現でした。欧州諸国が結束しEU創設を定めたマーストリヒト条約の調印が行われたのは平成4年。これによりヨーロッパがEUという巨大な統一市場を形成し、日本、アメリカとともに経済の中心になるという観測です。しかし平成の終わりを迎え、結果的に登場したのは、アメリカと中国による二極体制でした。

 そして3つ目の構造変化は、日本の凋落です。残念ながら、平成の30年間は、国際社会における日本の存在感が圧倒的に小さくなっていくプロセスでした。