「働きやすさ」では従業員は満足しない

 明治大学大学院グローバル・ビジネス研究科教授の野田稔氏と、GPTWジャパン代表取締役社長の岡元利奈子氏の対談では、本調査の結果をベースに、企業が働きがいを高めるために必要となる視点を議論している。

 まず、昨年(2018年)の結果との比較を紹介した。

 昨年の調査結果と比較して、改善が見られた質問の上位5つは「仕事と生活のバランスを取るよう推奨されている」「必要なときに休暇がとれる」「労働環境が安全で衛生的である」「従業員を解雇するのは『最後の手段』」「性的嗜好に関係なく正当に扱われている」だった。いわゆる、働き方改革で取り組まれた成果が現れている。

 一方で、低下が見られた設問は「経営・管理者層は、この会社に合った人を採用している」「私はこの会社で長く働きたいと思う」「会社全体で成し遂げている仕事を誇りに思う」「経営・管理者層は、事業を運営する能力が高い」「この会社の人たちは、仕事を達成するための努力を惜しまない」などだ。

「昨今の働き方改革は、“働きやすさ”への取り組みが中心です。労働条件や報酬条件を整えるのは、成果も目に見えやすく分かりやすいので、各社が一生懸命取り組んでいます。一方で、もう1つ大事なのが“やりがい”で、仕事に対するモチベーションや動機付けなど、目に見えにくく成果が現れづらいので、ここに取り組むのは難しくなっていているのかなと思います」(岡元氏)

「1960年頃のハーズバーグの衛生理論でも、まさにここを言っています。働きやすさを高めると不満は出てきにくい。しかし、不満を減らしたからといって満足(ハーズバーグの言葉では好感情)にはつながらないと言われています。今は“働きやすさ”ばかり取り上げられますが、好感情については、実は意外と顧みられていません」(野田氏)

明治大学大学院グローバル・ビジネス研究科教授の野田稔氏(右)と、GPTWジャパン代表取締役社長の岡元利奈子氏。