退職届の裏側にある「本音」を探れ。

(小林 麻理:ライター、社会保険労務士)

 退職を会社に告げる際、その理由は「一身上の都合」といったものが多いだろう。そこから一歩踏み込んだ「“真因”を聞き出す」という取り組みによって、自社の制度改善とともに、退職者減につなげたのが、はるやまホールディングス(以下、はるやま)だ。同社の取り組みとはどのようなものだろうか。

「一身上の都合」という建前に隠れた本音

 2019年2月13日、「リクナビNEXT」(リクルートキャリア運営)主催の「GOOD ACTION」の表彰式(第5回GOOD ACTION アワード)が都内で開催された。「GOOD ACTION」は多様な人材が活躍できる職場の取り組みに光を当てるプロジェクトだ。

 今回の表彰されたのは6企業。役職・階層・部署・情報格差ゼロを掲げ、「バリフラット」という組織モデルを築いたITサービスの企画/開発会社(ISAO)や、業務改善とジョブシェアによって従業員全員が子育て中の時短社員という状態を可能にしたマーケティング/PR会社(ルバート)、新規事業開発や自己開発を目的に海外渡航できる制度を導入したコンサルティング会社(こっから)など、業種や取り組みもさまざまな企業が表彰された。

第5回GOOD ACTION アワード表彰式の様子。

 本稿では、退職希望者の生の声をもとに30以上の制度改革を実施、離職率減を実現した「退職者ヒアリング」の取り組みが表彰されたはるやまに注目したい。

 はるやまは、スーツ専門店「はるやま」を中心に全国約530店舗を展開、従業員数は約3000人の企業である。同社が以前から行っていた退職者面談を、「退職者ヒアリング」としてルール化したのは2013年のこと。ルールを導入した同社管理本部・執行役員の竹内愛二朗氏はその背景を次のように振り返る。

「退職届の退職理由には『一身上の都合』としか書いてないことがほとんどです。それに対し、以前から退職者に対して面談は行っていました。その際、本当は転勤がしたくないから、職場の人間関係が良くないから・・・、といった本音を話してくれる人もいました。こうした、建前ではない理由を聞けて対策を打てれば、辞めなくてもいい社員が多くいるのではないかと考えるようになりました」