自由な雰囲気が感じられるネットプロテクションズのブランコ会議スペースの様子。

 次世代の組織像として話題となった「ティール組織」は、幸せな「働き方」につながるのか――。

 従業員の主体性を奪うような既存の組織モデルに対する問題意識から出発し、社員が自律的に行動する「ティール組織」的な文化を実現するに至ったという企業、ネットプロテクションズの事例を紹介しながら、3回にわたり「ティール組織」が「働き方」に及ぼす意味や実践のヒントを考えていきたい。

働き手を不幸にする前時代組織の「不信」や「恐れ」

 2018月1月、『ティール組織~マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』(英治出版、以下『ティール組織』)が刊行され、次世代の組織モデルとして話題となった。

「ティール組織」では、上下関係や売上目標はなくても、社員が組織の目指す目的に向かって自律的に行動し、それが驚くべき成果(業績やサービス向上)につながるという。同時に、前時代の組織モデルが抱える問題*1をも解決するというのだ。

「働き方」に関する既存組織の大きな問題点の1つが、「人々が職場において自分の個性を生かせず、やりがいを持って仕事をできていない」ということである。同書では、こうした問題が、以下のように言及されている。

「職場とは、自分らしさを失わず楽しく振る舞え、有意義な目的を目指しながら同僚たちと仲間意識をはぐくめるような場所だ――そう感じているのは、少数の幸運な人たちだ。圧倒的多数の人々によって、職場は苦役に服する場所なのだ。毎日、いくらかの労力を『提供して』、その引き換えに給料を得るにすぎない。これは、才能と情熱の無駄づかいにほかならない」(『ティール組織』より)。

 たとえば、従来のトップダウンの組織において、このような状況が発生する原因として「権力」の集中が挙げられている。仕事に対する決定権を持たない従業員がやりがいを失っていくと同時に、この「権力」をめぐり、政治的な駆け引きや個人的な野望、不信、恐れが発生するということである。