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(文:堀内 勉)

 久しぶりに画期的な組織論の本に出会った。

ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現
作者:フレデリック・ラルー 翻訳:鈴木立哉
出版社:英治出版
発売日:2018-01-24

 この『ティール組織 ― マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』は、単なるビジネス書ではなく、インターネットなどテクノロジーの進歩により可能になった個人の自律を前提とした会社のあり方、すなわち、自己組織化する組織「ティール(Teal)」を提唱する、進化論と発達心理学を基礎とした社会変革の啓蒙書である。

 本書の原著“Reinventing Organizations: A Guide to Creating Organizations Inspired by the Next Stage of Human Consciousness”は、2014年に自費出版されて以来、現在まで12カ国語に翻訳され、売上はすでに20万部以上に達しているベストセラーである。

 ピーター・ゼンゲの『学習する組織』が日本に紹介された時以来のインパクトと「解説」に書かれているが、確かにその通りかもしれない。本書の内容を肯定するにせよ否定するにせよ、これからの組織論を語る上で、本書を避けて通ることはできないだろう。

 テクノロジーの分野において、人類はこれまで様々なイノベーションを起こしてきた。数年前には想像もできなかったような製品が次々と現れる一方、組織形態については、遥か昔に生まれた軍隊的な組織運営から小さな改善を繰り返しただけで、さほど大きなイノベーションは起きていない。そこをブレークスルーしようというのが本書“Reinventing Organizations”(組織の再発明)なのである。

 本書の内容は多くの仮説を含んでおり、ブロックチェーン技術やAI(人工知能)と同じように、正にこれからここに書かれていることが本当に社会に変革をもたらすのかが試されるだけに、その実現可能性については、各人が実践的に検証してもらうしかない。

 実際、ティール組織については、エスタブリッシュされた既存の組織に適用するのはかなり難しいと思う。最低限、CEO(最高経営責任者)と取締役会がかなり深くティール組織の意味を理解し、その実現に向けて強く能動的に働きかけるのでなければ、決して達成できないものであることは、著者自身も認めている。

 なぜなら、ティール組織はこれまでのトップダウン型やコンセンサス型の組織論の常識を覆すような、組織を一人の人間のように、生命体的かつ有機的に捉えるものだからである。

 そうした前提で、ティール組織を理解するために必要となる知識を整理してみたい。