前回は、「リーンスタートアップ」の登場によって、「シリコンバレー流」のイノベーションの作り方が定式化され、それが破壊的イノベーション、DX(デジタルトランスフォーメーション)の流れの中で既存の大企業も注目を始めたことを、アジャイルの歴史とともに振り返った。

(バックナンバー)
第1回「企画と開発が責任を押し付け合う会社の前途は暗い」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/51448
第2回「『開発手法』だったアジャイルはここまで進化した」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/51870

 現代のソフトウエア中心のイノベーション、DXで大切なのは以下の事柄である。

・ニーズ(顧客)とシーズ(製品)の両方を低燃費で育てる続けること。
・企画と開発を組織分離せず、一体活動とすること。
・そのために、サイロ(既存組織の枠)を取り払ったチームを作ること。
・さらに、モチベーション重視の働き方、チャレンジと失敗を許す文化の醸成を経営が主導すること。

 キーワードとしてのAI、IoT、クラウドといったIT活用のインフラや要素技術に注目が集まっているが、実際には組織や人材をアジャイルを基礎にする「マインドシフト」、「組織構造シフト」が必要になる。

 この問題に入る前に、今回は、日本における伝統的なシステム開発の構造、起こり始めている変化について考察していこう。

ソフト開発に関する日本の産業構造の特徴

 まず、ソフトウエア開発に関する日本の産業構造の特殊性を指摘したい。日本では不思議なことに「ユーザー企業」(利用者側)と「IT企業」(提供者側)に分けてIT企業群を捉えることになっている。国内企業が参加する協会も2つに分かれており、「日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)」(=ユーザー企業側)、「情報サービス産業協会(JISA)」(=IT企業側)、となっている。

 では、実際にITエンジニアがどちら側に属するのか、という調査の結果が下図である。

ITエンジニアはIT企業とユーザー企業のどちらに属しているのか?
(出所:『IT人材白書』 IPA 2017~ITエンジニアが主体的に挑戦できる場を作れ~
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(* 配信先のサイトでこの記事をお読みの方はこちらで本記事の図表をご覧いただけます。http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52025