エリザベス1世の母アン・ブーリン

 それはさておき、こうして王妃キャサリンと離婚することができたヘンリ8世は、アン・ブーリンと結婚します。しかし彼女との間に生まれたのは、望んでいた男子ではなく、やはり女児でした。これが後のエリザベス1世です。

 ヘンリ8世が亡くなると、王位に就いたのは、彼の三番目の妻との間に生まれた男子、エドワード6世でした。幼いまま王となったエドワード6世は、摂政の力を借り、新教へのシフトを進めます。彼の時代に一般祈祷書が制定され、カトリックとは違った、国教会の礼拝方法が決められました。

血まみれメアリ

 しかしこのエドワード6世は若くして亡くなってしまいます。次に王位に就いたのは、ヘンリ8世と最初の王妃キャサリンとの間に生まれた一人娘、39歳のメアリでした。

メアリ1世(アントニス・モル画)

 メアリは、母キャサリンに敬虔なカトリックとして育てられていました。そこでメアリ1世として女王となった彼女は、イングランドをカトリックに復帰させます。さらに同じカトリック国家であるスペインの皇太子アストゥリアス公フェリペ(後のスペイン国王・フェリペ2世)と結婚。そして国内の新教徒に対しては、打ち首、火あぶり、さらし首など残忍な方法を用いて、激しい弾圧を加えるようになるのです。こうした犠牲者は数百名に上るとされ、彼女は「ブラッディー・メアリ」(血まみれメアリ)と呼ばれ恐れられました。

 ただ、メアリ1世の治世も長く続きませんでした。病気により42歳でこの世を去ってしまうのです。

 次の王位継承権者は、ヘンリ8世と2番目の妻アン・ブーリンとの間に生まれた女の子、エリザベスでした。彼女の母と結婚するためヘンリ8世はカトリックと決別したわけですから、彼女はもちろん新教徒です。

 それだけに、メアリが女王の時代、エリザベスは過酷な生活を強いられてきました。

エリザベスの過酷な半生

 アン・ブーリンとヘンリ8世の婚姻期間は3年ほどしかなく、エリザベスが2歳半の時、すでに「元王妃」となっていたアン・ブーリンは処刑されます。国王の娘であるエリザベスも、庶子とされ、一時期、王位継承権を失ってしまうのです。