――イノベーションの観点から、日本にどのような期待を抱いていますか。
ベルガー 日本はどちらかというとグループ志向が強いので、製品を少しずつ良くするとか、プロセスを少し早くするなどの段階的なイノベーションで成功する方が可能性は高いと思います。最初の自動車を発明したりとか、蒸気機関を発明したりといった画期的なイノベーションは、どちらかというとヨーロッパやアメリカで生まれることが多く、日本で生まれる可能性は高くないと思います。
とはいえ、日本にも素晴らしい科学者や企業の方々がいますので、すでに生まれているものに革命を起こすことはあり得ます。トヨタは、クルマ自体は発明できなかったですが、その生産方式を発明することができました。できるだけ少ない人数で、最低限のコストで最大限の品質を引き出せるような、まったく新しい生産方式を作れたのです。そういうイノベーションは可能だと思います。
人生をプラスにできて初めて価値がある
――日本のイノベーションに必要なものは何でしょうか。
ベルガー スタートアップのクラスターが、欧米と比べて日本には足りないと思っています。シリコンバレーが有名ですが、ドイツにもシュトゥットガルトにAIのクラスターがあり、ミュンヘンにはバイオテクノロジーのクラスターが、そしてベルリンにはインターネット関連のシリコンバレー的なクラスターがあります。
カルチャーの問題にもなりますが、スタートアップが失敗したとしても、それを許容できるような環境が必要だと思います。もし何か失敗をして破綻に至ったとしても、西欧諸国ではもう一度同じ投資家のもとに行き、「これまでの経験から学んだね」と許してもらえる土壌というのがあります。日本だと、一回失敗してしまうと、あるいは成功しないと経歴に汚点が付くという見られ方をしてしまうので、そこは問題だと思います。
なお、テクノロジーを軸としたスタートアップのクラスターには、5つの要素が必要です。