日本に期待されるイノベーションは
――ベルガー会長は「イノベーション」という概念をどう捉えていますか。
ベルガー イノベーションというのは、世界をより良くするための材料だと思っています。
最初の世の中を大きく変えるイノベーションという意味では、蒸気機関の発明がイギリスであったのが挙げられます。蒸気機関が発明される前は、世界中の一人あたりのGDPはほとんど同じで、みんなが同じ仕事をしていました。そこに産業革命が起こることで機械が生まれ、人の富は格段に飛躍しましたし、経済的な富も急成長し、そして仕事の質も格段に改善されました。つまり、新しい機械や製品が生まれることによって、生産性が向上して、よりよい世界になりました。これがまさにイノベーションだと思います。
今はデジタルトランスフォーメーションの時代を歩んでいて、それは蒸気機関が発明された頃と同じような環境にあると思います。それから250年たった今、世界はかなり裕福になっていますし、生産性を向上することによって、労働時間は減っています。そしてより魅力的な仕事も増えてきているし、クリエイティブな仕事も増えてきています。
――イノベーションを推進していくために、どのような取り組みが必要でしょうか。
ベルガー たとえば、会社の中に研究開発部門を作ることや、スタートアップのクラスター(事業者の集合体)のように会社間の協力体制を築くことが考えられます。その中で、ローランド・ベルガーは「和ノベーション」というイニシアティブを推進しています。
「和ノベーション」とは、ローランド・ベルガーが提唱する日本型イノベーションで、日本ならではの「和」、垣根を越えた対話の「話」、仲間の「輪」の意味を重ねています。企業や個人が持つさまざまなノウハウ、技術、知恵などの暗黙知を、モジュールとして可視化し、対話を通じて、部門、企業、業界を越えた仲間の輪へと広げます。このようなモジュールの徹底的な活用により、異次元のスピードで新しい価値創出を推進するという考え方です。
ローランド・ベルガー東京オフィスでは、現在、志を共にする「和ノベーションの仲間企業」として12社に関わってもらっています。新しいアイデアや経験の共有、仲間が持つ能力や知恵を組み合わせ、自社単独では不可能であったスピードやレベル感でイノベーションを量産する取り組みをしています。