全国で「事業承継」への相談が増えている。帝国データバンクは、2017年11月28日に発表した『2017年 後継者問題に関する企業の実態調査』で冒頭にその危機感を記した。

「経済産業省の推計によれば、後継者問題等による中小企業の廃業が急増することで、2025年頃までの10年間で約650万人の雇用、約22兆円のGDPが失われる可能性が示唆されている。政府・与党は2018年度の税制改革において、事業承継に関わる税制優遇措置を拡大する方針であるとされ、今後10年近くをかけて、集中的にこの問題に取り組む姿勢を見せている。」

 コンサルタントで『社長のベンツはなぜ4ドアなのか?』などのベストセラーがある小堺桂悦郎氏は、現状の経営者の姿勢に警鐘を鳴らす。

事業継承には4つの方法がある

「ここ数年でたしかに廃業にかかわる案件が増えましたね。以前であれば借金を抱えてどうにもならないと、倒産一歩手前で駆け込んでくるような案件に、銀行返済に対するリスケのアドバイスをすることが多かったです。最近では銀行もリスケに応じるようになり、その間に廃業を考える時間的な猶予ができたことも大きいのではないでしょうか」

 そう話すのは、資金繰りコンサルタントして著名な小堺桂悦郎さんだ。

 多くの場合、いきなり廃業を切り出す相談者に対して、黒字部門と赤字部門を切り離して事業の一部を続けさせたり、売却したりというアドバイスをすることも多いと言う。

「その意味でも、経営者にとって選択の幅は広がりました。それなのに、まだその方法を知らない経営者が多いというのが現状ではないしょうか」と小堺さんは話す。

 事業継承と一言で言っても、具体的には以下の4つの具体的方法がある。

1、 上場
2、 後継者への承継
3、 M&A
4、 廃業

 小堺さんが、最近よく受ける相談は、後継者への承継、M&A、廃業についてだ。

 たとえばM&Aの案件で相談を持ち込まれても廃業が出口になることもあり、その逆に廃業したいと相談される中で、それならM&Aで売却したほうがいいだろうというケースになることもある。

「最初に言っておきたいのですが、自分の会社について知る、これが一番大事なことです。私が口酸っぱく述べてきたことですが、自分の会社について知らない経営者が多すぎます。たとえば決算書の貸借対照表、損益計算書についての知識はふだんの経営上も必要だと思うのです。なのに、それもよくわからずに会社を後継者に譲ったり、売買するというのは、あまりに無謀だと思いませんか? 事業承継を考えるタイミングであるなら、ぜひこうした勉強から始めてほしいと思います」