人生100年時代を迎え、生き方、働き方の見直しが迫られている。同じように会社や経営者の在り方も大きな転換期を迎えているといえよう。
特に事業承継は大きな問題だ。後継者不在はよく取り上げられるが、それも経営者が「自身が退いたあとの会社の在り方」への対策を取っていないことが原因である。前回はそのために起きた悲劇を紹介した。
経営者は今、何をすべきなのか。
倒産企業数の約4倍の企業が休廃業を選択
「10年以上にわたり事業承継に携わってきましたが、開業当時は、私が考えていたイメージより相談内容がすごく悪かった。相談案件の7割は存続が難しい会社の案件でした」
そう語るのは、司法書士で事業承継デザイナーを務める奥村聡さんだ。
「一昔前は、借金を返済できずに倒産したケースが多かった。今は金融機関が借金返済のリスケ要請にも積極的に対応しますし、その前に廃業という選択肢があることが周知されたようです」
商工リサーチの統計によれば、2017年の倒産企業数は8405件。それに対して休廃業した企業は2万8142件に上る。倒産数が1万件を割り込む中、その4倍の企業が休廃業を選択している計算だ。
それでもいまだに事業を続けること――事業承継に対する認知度は低い。前回紹介した家族のように(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54460)差し迫った段階でようやく気付いても遅いのだ。
廃業を含めた事業承継のポイントは、とにかく早めに動くことであると奥村さんは言う。
「理想ですが50代後半になったら、事業承継に関して動き始めてほしいと思います。現実には70歳過ぎてからドタバタしだす社長がほとんどです。そうした場合の事業承継は何らかの事情で進まないケースがほとんど。早い段階で動き出した社長ほど、次の継承のことも含めてしっかり次の形まで持っていけるケースが多いのは間違いありません」
実はこの事業承継問題を最も難しくしているのは、経営者たちの「気持ち」だ。「自分の代で終わらせたくない」「創業者(あるいは親)に申し訳が立たない」「従業員が路頭に迷ってしまうのではないか」・・・そうした経営者の気持ちはよくわかる。
「ただ、そうした気持ちに引っ張られすぎると、どの選択肢も選べないので、最悪の事態を招きかねません。多くの場合、最も大きな壁がこの経営者のマインドにあると思います」