大阪「ミナミ」の象徴・戎橋。公示地価で「キタ」を抜き、路線価でも肉薄する(写真はイメージ)

「不動産市場は活況」。2020年に控えた東京五輪によって首都圏を中心とした建設ラッシュは続いている。では、実際に不動産はどう見るべきなのか。2018年3月に発表された「公示地価」と7月に発表された「路線価」からその傾向をニッセイ基礎研究所・金融研究部准主任研究員の佐久間誠氏に聞いた(JBpress)。

「人が集まる地域」「人が集まらない地域」で進む地価の二極化

「不動産の価格を表す指標には『公示地価』『固定資産税路線価』『基準地価』『路線価』の4つがあり、このうち一番最近に発表された(毎年7月)のが、路線価です。公示地価は不動産取引の参考となる指標ですが、路線価は相続税、贈与税を計算するためのもの。公示地価をおおよそ八掛けしたものが路線価にあたるとされています。そのため、路線価=取引価格というわけではなく、地価の上げ下げの傾向を知るための指標として見るべきです」(佐久間氏、以下同)

 路線価を発表した国税庁によれば、今年は全国平均で前年比0.7%アップし、3年連続の上昇となった。都道府県別では、東京、大阪、愛知など18都道府県で上昇している。昨年は13都道府県だったので、都市部を中心に不動産売買が活発化しているように読み取れる。

「路線価のトップは33年連続で東京・銀座の『鳩居堂』前です。1平方メートルあたり4432万円と、バブル期の終わりである1992年の3650万円を大幅に上回る水準で、前年に続き過去最高を更新しました。また、公示地価を見ると、地方にも徐々に波及していることがわかります。たとえば、三大都市圏を除いた『地方圏』の商業地は26年ぶり、バブル以降初めてプラスになりました。バブル以降で、もっとも地方まで地価上昇が波及しているといえます」

 やはり「不動産」は活況なのか。しかし、それはすべての地域で上昇しているということではない。路線価を47都道府県全体で見ると、じつは地価が上昇した地域よりも下落している地域のほうが多い。とりわけ顕著なのは「二極化」、そして「スポット化」だ。

「それがよくわかるのが、地方主要4都市の『札仙広福(札幌、仙台、広島、福岡)』です。中心部の地価はすごく上昇していますが、その周辺地域では下落するところもあるという現象が起きている。札幌市内でも住宅地の地価が下がっている区があるんです。『東京と地方』という二極化だけでなく、同一都道府県内の二極化もかなり進んでいます。それは東京も例外ではありません」

 例えば、田園調布や成城学園前。高級住宅地としてブランド力を誇っていた東京の一等地は徐々にその価値の低下が指摘されている。「都心から少し離れた閑静な住宅地」という価値が「都会の利便性」という新しい価値にとって代わられているわけである。

 この「二極化」「スポット化」の傾向を端的に言えば「人がより多く集まるエリア」は地価がどんどん上昇し、「人があまり集まらないエリア」は下落していく状態である。