
写真提供:共同通信社
国内での天然ガス需要の増加を見据え、地方の都市ガス会社が相次いでLNG(液化天然ガス)基地の能力増強を決定した。一方、海外からの調達面では米露の地政学的リスクも浮上し、安定供給に向けた新たな課題も浮上しつつある。
このほど閣議決定された「第7次エネルギー基本計画」の内容やトランプ外交の影響なども踏まえ、都市ガス業界の最新の事業展開と課題についてガスエネルギー新聞常務取締役編集長の大坪信剛氏に聞いた。
需要拡大を見据えて、LNG基地の能力増強の発表が相次ぐ
──地方の都市ガス事業者が、LNG基地の能力増強を相次いで決定しているそうですね。

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大坪信剛氏(以下・敬称略) 2024年11月、西部ガス(福岡市)が北九州市若松区のひびきLNG基地の増強を発表しました。2025年夏に3号LNGタンクの建設に着工し、2029年度上期の竣工を予定しています。また2025年1月には北海道ガス(札幌市)が、苫小牧東港に新たなLNG基地を建設する方針を明らかにしています。
──どのような背景や狙いがあるのでしょうか。
大坪 基本的な背景にあるのは、世界的な天然ガス需要の高まりです。IEA(国際エネルギー機関)が発表した2024年版の「世界エネルギー見通し」で、天然ガスの他、石炭、石油のそれぞれの世界需要が高まり続け2030年までにピークを迎えると予測しています。また、カーボンニュートラルに向けて国内で低炭素の天然ガス需要がその頃まで伸びると見られているからです。
LNGはタンク内でも徐々に気化してしまうので、長期間の貯蔵はできないのですが、それでも都市ガス会社としては、需要のピークに対応できるだけのタンク容量を確保しておかなければ大きな機会損失を生んでしまう可能性があります。
タンクを建設してから稼働できるまでに5年程度はかかります。そのため、ピークに間に合わせるには今のうちに建設を開始する必要があり、各社が相次いで投資を決定しているのです。