政策は変更せず

 政策について金秀顕氏は、「経済悪化の圧力が大きくなっており、また、対外条件の不確実性も積み重なっていることは明らかだ」と説明しながらも「大きな方向を修正することは全く考えていない」と政策変更論を一蹴した。

 洪楠基氏も11月9日に韓国記者の前に姿を見せ「所得主導成長論については論争している場合ではなく、前に進めていくべきだ。一部問題点に対する指摘もあるが、これは、調整、補完すればいい」と語った。

 文在寅大統領も、11月9日の会議で「経済成長はしたが、その過程で『公正さ』が置き去りにされ、ともに成し遂げた成果物が大企業集団に集中することになった」と述べ、経済民主化の考え方に変わりないことを改めて示した。

 それでは、今回の責任者2人はどんな人物で、どう政策を推進するのか?

 本当に「ワントップ」になるのか?

 今回の2人の中で、副首相兼企画財政部長官に内定した洪楠基氏は、高度成長時代に経済成長のシナリオ作りにあたった経済エリート官僚集団である経済企画院(今の企画財政部)出身だ。

 ソウル大出身者が主流を占める組織内で数少ないソウルにある漢陽(ハニャン)大経済学科出身だ。予算通という韓国メディアの報道が多いが、派手さのない堅実な官僚だったようだ。

政治的には中立な能吏

 盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時代に青瓦台で勤務して、現政権の人脈と縁ができたが、政治的には中立だった。李明博(イ・ミョンパク=1941年生)、朴槿惠(パク・クネ=1952年生)政権時代にも順調に出世を重ねた。

 企画財政部の政策調整局長や未来創造科学部第1次官などを歴任し、文在寅政権発足とともに首相のもとで政策全体の調整機能を果たす国務調整室長を務めた。

 今回の人事も、李洛淵(イ・ナギョン=1952年生)首相の強い推薦があったという。エリート官僚らしく、どんな上司とでも呼吸を合わせて実務を処理するタイプだ。

 だから洪楠基氏には、サプライズなく、淡々と実務にあたるだろう。注目を浴びているのは、一方の金秀顕政策室長だ。