規制緩和や減税などを通して財閥や大企業を優遇し、韓国経済全体のパイを大きくして成長と雇用拡大を目指す――。
これまでの政策の結果、財閥や大企業は大きくなったが、雇用は全く増えない。格差ばかり拡大するとの視点に立って、思い切って政策を転換した。
「所得主導成長論」はその目玉だ。
最低賃金の引き上げや非正規職の正規職転換を進めて中間層以下の賃上げを図る。その結果、消費拡大、企業業績向上、投資拡大、雇用拡大というサイクルを実現させようという政策だった。
ところが、実際に、最低賃金を2018年に16%引き上げてみると、予想外のことが起きた。中小零細企業が「耐えられない」とばかり「人減らし」に乗り出したのだ。
2019年の最低賃金引き上げ率は10.9%に「抑制」したが、中小零細企業の悲鳴はさらに大きくなっている。
財閥や大企業主導の経済からの転換に反対する声は韓国内で少ない。だが、急速な変化に副作用も大きく、こうした点についても2人の見解が異なったようだ。
金秀顕氏がまず「ツートップなどない」と強調したのは、ただでさえ難しい時期に、2人の責任者の間でコミュニケーションが取れていないことに、政府与党内からも批判が出ていたからだ。