日本が「言うべきこと」はしっかり言わなければ、相手の掌に載せられてしまうということである。

 外務省は、とかく首脳会談が平穏裏に行われたふうに装うことが多い。

 しかし、領土問題、歴史戦、靖国、ODA問題などについてはその内容を努めて国民に開示して、国家的意見の集約を見つけるようにすべきであろう。それが国益増進につながるはずである。

 外務省は省益あって国益なしで、「害」務省と揶揄されることが多い。

 首脳外交は友好の場であると同時に、国益を踏まえた闘いの場でもある。首相が国民の総意を持って臨むためにも、国民に真実を知らせ、普段からの意見集約が不可欠である。

 中国の一帯一路構想を多くの国が新植民地主義と批判し始め、関係国の中には計画の中止や縮小を進めているところもあり、困難に直面しつつあるとされる。日本接近はそのための後押し渇望という見方もある。

 安倍首相は、中国が日本に接近するのを歓迎すると同時に、友好を傷つけるかもしれないと忖度して曖昧な発言に留めるのではなく、「明確かつ敢然」と主張すべきは主張してほしい。

 また、理不尽な要求には断固反対を示してほしい。この方が、長い目で見れば「真の友好」につながるからである。

ロシアにも焦りが見られる

 ここまで中国を主体に述べてきた。しかし、北方領土はロシアに不法占領されたままである。

 安倍首相の「新しいアプローチ」を、ロシアは自国の都合の良い経済協力先行のように解釈している。そして、師団を配備し、またミサイルを展開するなどの軍事力を強化している。

 他方、2010年にはドミトリー・メドベージェフ大統領(当時)が日本の抗議を無視して国後島に上陸し、2012年には首相として再度上陸した。

 その後も同首相は択捉島に上陸するなど、北方領土はロシア領といわんばかりの示威行動をとってきた。

 ロシアがG8から追放されて以降、経済制裁が続行され、頼みの資源外交にも陰りが見えるなどして、隘路打開に中国接近を顕著にしてきた。しかし、頼みの綱の中国からの支援も怪しくなりつつある。

 経済で国民を活性化させなければ、長期政権を手に入れたばかりのウラジミール・プーチン大統領も信頼を失墜し、早々にレームダックしないとも限らない。

 そこで、安倍首相の新アプローチをあえて曲解してでも、日本への接近を強めようとの意図からか、突然「前提抜きの平和条約締結」を提案してきた。

 安倍首相には今後の3年間で外交懸案の全てを解決してほしいが、そう簡単ではないであろう。

 相手の接近を好機ととらえ、残された懸案については日本の国家意思を明確に反映した「解決方向」を確立してもらいたい。