時代の波に乗り遅れる日本の防衛力整備
時代の変化は速い。そのため、一国の防衛に当たる者はその変化を見極め、少なくとも10年先を見て行動しなければならない。
しかし、時代の変化を見ていない者、あるいは、どうせ1番にはなれないから、後から出来上がったものを購入すればいいと考えている者には時代の変化は見えない。
ローマ時代のカエサルが「人は見たいと欲するものしか見ない」と言ったことは真実である。
経済活動においてもイノベーションは必須だが、こと防衛においては「破壊的イノベーション」が死命を制する。
ある日、ゲームチェンジャーなるものが出現し、現状の防衛力において破壊的イノベーションが起きると勝敗は一変する。
しかし、中国の脅威を脅威と感じたくない日本人は、急激な技術革新に対応しないと国が亡びるかもしれないと言う話に耳を傾けず、相変わらず防衛に新たな予算を投入しない。
そして、いたずらに時が流れるが、決して時代は日本を待ってくれない。
実に「今がその分水嶺」であり、今年末に策定される「防衛計画の大綱(防衛大綱)」・「防衛力整備中期計画(中期防)」の意味はそこにある。
財務省を納得させなければならない防衛省内局や統合幕僚監部(統幕)は、この重大な局面に差しかかっていることを強く認識しているだろうか。
いま起きている破壊的イノベーションの波に乗り遅れた防衛大綱・中期防を策定するようなことになれば、この5年間で日本は中国に打ち勝つ手段を失い、最も重要な米国との戦略的一体化も夢で終わるだろう。