総理の訓示から読み取らなければならない大切なポイントは次の通りである。

(1)現大綱で想定されているような海空を重視する、WW2のような海空決戦が生起する可能性は極めて低い。また、中国と「対称的」な戦力で対抗することは、際限のない防衛費の増大を招くばかりか、いずれ戦力は枯渇する。

 まして、米国は中国本土の攻撃は核戦争を誘発するとして、中国本土への攻撃を控えることから、「長期戦」になることは必定である。

 また、中国の日本などの第1列島線上の国々に対する攻撃は「短期高烈度決戦(Short Sharp War)」と言われている。しかし短期といえども、2か月以上続くと米国は見積もっており、その間日本は独力で「生き残り、戦い続ける」ことが要求されている。

 すなわち、長期戦向きの陸上戦力からの物理・非物理打撃力を充実し、すさまじい破壊力を持つが永続性がなく短期決戦型の海空戦力を生き延びさせ、重要な時期に陸海空がクロスドメイン(領域横断)で戦う考え方が日本の戦略の基本である。

 防衛大綱・中期防は、この点をしっかり踏まえたうえでの策定が求められる。

 ちょうど、織田信長・徳川家康連合軍が、長篠の戦で武田の騎馬軍団を撃破した理屈と同じであり、またハリス元太平洋軍司令官が海軍の演習であるリムパックに陸自の対艦ミサイル部隊を参加させたのも同じ理屈である。

 「静」と「動」の組み合わせで戦うことは、古代から変わらない「戦理」である。

 この際、防衛大綱論議の中で、「制空権・制海権から制脳権へ」が議論されていることは重要である。

 我々が認識すべき中国との戦いの姿は、最初から海空決戦などはない。戦いの様相は以下に示したように現防衛大綱策定の時と全く異なるものだ。