日本はいつまでノーベル賞受賞者を輩出できるか
筆者が考える理由が正しいかどうかは分からないが、京大がほぼ10年に1人の割合でノーベル賞受賞者を輩出し、また、2000年以降、日本では、ほぼ1年に1人の割合でノーベル賞受賞者が出現している。
しかし、「ほぼ1年に1人の受賞者」がいつまで続くかについては、不安がある。というのは、最近のノーベル賞受賞者が、口を揃えて「日本の大学の基礎研究力が劣ってきている」ことを懸念しているからである。
上記に加えて、ちょっと古い本であるが、後藤尚久氏(東京工業大学名誉教授)が著書『アイデアはいかに生まれるか』(講談社、1992年)の中で、日本が知的生産力において、ピークを保てる期間はそう長くはないことを予言しているからである。以下に後藤氏の論説を紹介しよう。
遅れてやってくる知的生産力のピーク
前掲書で後藤氏は、「いかにして独創的なアイデアを生み出すか」を論じているが、筆者の注目した点は、これとは別にあった。
後藤氏によれば、イギリスはナポレオン戦争に勝った1815年から世界最大の債権国(つまり最も金持ちの国)になり、この時代が100年続いた。次に、アメリカの時代が70年続き、そして、日本の時代が21世紀初頭までの40年続くだろうと予測している。そして、世界最大の債権国の期間が100年 → 70年 → 40年と、徐々に短期化していることを指摘し懸念している。
後藤氏がこの本を出版したのは1992年。バブルが崩壊した直後とはいえ、経済大国となった日本の繁栄が21世紀初頭で終わることを、何のためらいもなく言い切っていることに驚かされる。