今年のノーベル物理学賞は、アーサー・アシュキン博士と、ジェラ―ル・ムル教授+ドナ・ストリックランド准教授の3人が受賞しました。
本稿を記している10月5日の時点で、医学生理学、物理、化学、平和の各賞が発表されており、物理、化学、平和の3賞で各々女性受賞者が一人ずつ、平和賞はレイプを巡る問題で、ジェンダーが一つの裏テーマになっているように思います。
ノーベル物理学賞を女性が受賞したのは、1903年のマリー・キュリー、1963年のマリア・ゲッパート=マイヤー以来55年ぶりと報じられています。
60年周期の大地震程度に希な事態扱いになっていることが、改めて浮き彫りにされた感があります。
そこで、今年の物理学賞を巡っては、業績内容とともに、女性研究者への差別やアカデミック・ハラスメントを考えてみたいと思っていました。
ところが、書き始めてみて紙幅をオーバーしてしまったので、それについては回を分けることにします。
今回は、タケコプターやスペシウム光線が不可能だという、夢はないかもしれませんが、分かりやすい内容を記しましょう。
極微と極大:レーザーの2つのフロンティア
アーサー・アシュキン博士(1922-)の受賞は、過去のノーベル賞で最高齢の受賞と報じられました。
私の率直な感想は、南部陽一郎先生同様きちんと間に合って良かった、というものです。
彼の無数の発見や発明に基づく「より下流の業績」がすでにノーベル物理学賞を得ており、アシュキン博士が受賞されないのは不自然というのが率直なところです。
南部先生の受賞が、そのはるか下流の1つである小林・益川理論(小林誠・益川敏英両氏)とワンセットで授賞されたのと同様、今回のアシュキン氏の表彰は、すでに歴史的な現存物理学者の未受賞者に、より若い世代の業績とセットで贈られたとみるのが正確でしょう。