九州にある小さな印刷会社では、社長自らが業務改善ポイントを洗い出して、業務の整理や見える化を行いました。まずはアナログでも解決できるようにしてから、さらにクラウドでシステム化を行いました。その結果、なんと終業が15時になり、しかも社員はいつでも休暇を取れる環境を実現できました。

 どちらもIT企業ではありませんし、主導したのはエンジニアではありません。業務ハックは特別なものではないのです。現場にいて、もっと効率的に、もっと楽しく仕事ができないかと考え、改善に取り組んでいる人たちは多くいるのです。

 これまで業務改善は、意欲とスキルのある人が業務の隙間をぬって行うことが多かったのではないでしょうか。それでは継続性がないし、その人がいなくなったら改善は止まってしまいます。

 業務ハックによって企業の生産性を向上するという重要な役割は、社内SEや雑用係のような立場の人ではなく、「業務ハッカー」という職種が求められているのです。

業務ハッカーが活躍する社会に

 将来を考えれば、人口減少による働き手不足が深刻になる一方で、人工知能の発達によって単純労働は減少していくことが予想されます。そうした中で求められるのは、業務をこなすだけの人材よりも、少ない人数でも効果を発揮することのできるよう業務を効率化する仕組みが作れる人材、すなわち業務ハッカーです。

 業務ハッカーが活躍すれば、無駄は減って生産性は向上し、その結果、現場には余裕が生まれます。余裕があるほどに改善は進み、新しい取り組みへのチャレンジを後押しします。新しいビジネスや新しい働き方は、こうした余裕から生まれるものです。

 働き方改革を目指すのではなく、業務ハックで改善を続けることで働き方や、ひいては会社そのものが変わっていくのです。会社が変われば社会も変わります。小さく始める業務ハックが、大きな社会変革に繋がっていくかもしれません。

 そんな大袈裟なことを言わなくても、そもそも生産性をあげるための創意工夫のアイデアを出して実現できる業務ハックは、やりがいもあり、とても創造的で楽しい仕事なのです。そんな風に仕事自体が楽しくなるなんて、それこそ本当の働き方改革だと思いませんか。

 業務ハッカーが世の中に広く認知されていくことで、業務改善に取り組む人たちがもっと高く評価されるようになって欲しいと願っています。

 本連載だけでは語りきれなかった業務ハックのノウハウやテクニックについては、以下のサイトに情報をたくさん集めていますので、参考にしてください。https://www.gyomy.com/