実はこれは死んだ親が教えてくれた「9の段は足すと必ず9になる、なぜ?」なぞなぞの答えで、小学1年生の私には十分理解でき、また面白いものだな、と数理に興味をもつきっかけにもなった、懐かしいお話になります。

 同じことを、もう少し学年の進んだ子に教えるなら、どうしたらいいでしょうか?

 「別解」あるいは「別証明」を与えるという、数理の醍醐味の入り口を、子供に教えるいいチャンスになります。

 例えば 9 というのは 9 でもありますが 10-1 とも 書くことができます。小学校高学年―中学生向けに 文字nを導入した「文字式」を使って原稿枚数を節約することにすることにして、9のn倍が「XY」という数だとしましょう。

 Xは10の位、Yは1の位のつもりですから、正確には(X×10)+Yですが、以下では簡単に

 「XY」=9×n=(10-1)×n

 と書くことにします。ここでnは1、2、3、4、5… 9までの、一桁の自然数です。

 この()の中を展開すると

「XY」=(10-1)×n=(10×n)-n

 となりますから、n×10 から n を引いたことになる。ということは、10の位は必ず

n-1

 になるので

X=(n-1)

 であることが分かります。そこでこれを上の式に代入すると

(10×n)-n={10×(n-1)}+10-n

 となり、1の位Yは

Y=10-n

 そこで

X+Y=(n-1)+(10-n)=n-1+10-n=9

 となり、nの値によらず、常に9になることが示せました。

 こうなると、何が得かというと、もう九九の9の段は暗記しなくてもよいわけです。