ガチンコ討論?

 こうした事態を受けて5月29日、文在寅大統領は「緊急経済点検会議」を招集した。

 経済副首相兼企画財政部長官、青瓦台(大統領府)政策室長、経済首席秘書官、労働部長官、公正取引委員長など現政権の「経済政策の責任者」が勢ぞろいした。

 「1~3月期の調査結果、所得下位20%の方の所得が減ったことは私どもにとっては大変、手痛いことだ。経済政策がうまく機能しているのか、虚心坦懐に話し合ってみよう」

 文在寅大統領はこう話を切り出した。会議には担当者や実務者は出席せず、責任者だけでとことん議論したようだ。

 議論の内容の詳細は公開されていない。ただ、韓国メディアは「時に激論になり、発言内容が外部に漏れないように注意しようという話になった」と報じている。

 文在寅政権内では最近、経済の現状判断や、最低賃金引き上げの効果などを巡って一部で不協和音が出ていた。

 景気は拡大局面なのか低迷期に入ったのか。最低賃金を一気に引き上げたことで副作用は出ていないのか。こうした問題について、経済副首相と青瓦台の室長、あるいは経済政策の諮問委員などの間で、異なる見解を示す場面が出ていた。

 この日の会議は、大統領の前で一度きちんと議論するという目的もあったようだ。

雇用も改善しないが、代案も見当たらず

 文在寅政権は、最低賃金引き上げ、実質労働時間短縮、非正規職の正規職への転換など、「庶民層」の雇用環境を改善する政策を打ち出して実行してきた。

 「働き口対策」には11兆ウォン(1円=10ウォン)もの予算も投じている。