筆者が住むソウルのアパートでは2017年12月にこんな張り出しがあった。
「警備員減員のお知らせ」だ。最低賃金引き上げによるコスト増を管理費ではまかなえず、2人いる警備員を1人に減らす。よって、週末の勤務がなくなるという内容だった。
同じような話を食堂やコンビになどでも聞いた。
雇用主の立場から見れば、いきなり賃金が16%も上昇すると、対応するのが大変だ。零細企業や商店は死活問題だ。だから、勤務時間を短縮したり、やむをえず、人員削減に踏み切った例も少なくない。
最低賃金は上昇したが、そのおかげで雇用や就業時間が減り、かえって所得が減ってしまったという例もある。
所得主導成長論
「所得主導成長“失敗”」
5月25日付の「毎日経済新聞」は1面トップでこう報じた。「第1階層」の所得大幅ダウンは、失政だという意味だ。
文在寅政権は「所得主導成長」を掲げてきた。
これまでの政権は、減税や規制緩和など大企業に様々な支援をした。大企業が成長すれば、それがけん引役となって経済全体が成長するという考え方だった。
ところが、長年の「サプライサイド政策」の結果、何が起きたか。