ところが、所得は大幅に減少した。雇用状況も一向に改善しない。統計庁によると、「体感失業率」は4月も11.5%を記録した。庶民層の雇用も所得も改善しないのだ。

 エコノミストの見方は分かれる。

 そもそも経済政策が政権発足からたった1年で目に見える効果を上げるはずがない。もう少し時間をかけて評価すべきだという見方もある。

 一方で、「所得主導成長論」は、そもそも無理な政策だという意見も根強い。産業界でも、「企業の負担ばかり重くなる」と嘆く。

 では、だからといって、何か妙案があるのか。文在寅政権が進める「格差縮小策」を批判するのは簡単だが、これまでの政権も決め手となる政策など打ち出せなかった。

 財閥中心の経済構造、急速に進む高齢化による将来への漠然とした不安感、主要業種での競争力の低下、造船産業など構造不況業種の処理の遅れ、強い労組・・・。

 半導体や化学産業のような「強い業種」がある一方で、韓国経済は多くの構造問題を抱える。こうした複合的な構造問題の解決は容易ではない。

 文在寅政権は、「最低賃金」を2019年以降も引き上げる方針だ。さすがに、雇用主の負担が大きいことにも配慮して、その「最低賃金」に「賞与」や「福利厚生費」の一部を含めることになった。

 それでも「所得主導成長論」の旗はそのまま掲げると見られる。だから、「格差拡大」の統計は、放置できない。近く何らかの追加的な「庶民対策」を打ち出すと見られる。

 「大きな政府」もまた、今の政権の大きな方向であるのだ。