一方、こういったやり方をしていく際に気を付けなくてはいけないこととして、仕事の多忙な時期にはついつい担当が偏りがちな点を指摘する。

「我が家の場合には、1月・2月は大学の業務が忙しくなるので、気がついた方がやるというフレキシブルなやり方だと、いつの間にか負担が妻の方に偏っているという状況になります。どこで是正するかは夫婦間で相談が必要です」(福地氏)

 この点に気づいてくれるかどうかは、女性の立場からすればキーポイントだ。

家事育児のクオリティのすり合わせは必須

明治大学 総合数理学部 教授 福地健太郎(ふくち・けんたろう)氏。専門はユーザーインタフェースや知覚心理学、エンタテインメント応用など。一児(娘)の父。妻は民間企業でR&D職(時短勤務)。

 こういった「どちらか気づいた方がやる」というスタンスで、家事のやり残しや失敗などの問題は起きないのだろうか。

「もちろん起きますよ。それでもなんとか我が家がやっていけているのはなんでだろう、という話を妻としたんですよ。結論としては、二人が“家事に求めるクオリティ”がそもそもゆるい、ということが言えそうです。基本、家族みんなが生きているから大丈夫だ、そこを最低限守っていこう、というスタンスでやっています」と福地氏は言う。

 そもそも家事育児は、それぞれの家庭によって「どこまでを目指すか」という地点が違う。そこで大事になってくるのは、クオリティのすり合わせである。例えば、子どもが夜パジャマを着ない、という際にそれを許せるかどうか。そんな「最低ラインはどこなのか」といった話は二人ですり合わせをした上で、そのラインを越えたらお互いに褒めあう、くらいの方が良いと言う。

「ただ、最初の子供が産まれる前に基本的な家事遂行能力を二人とも上げておくことは大事ですね。僕も妻も、手を抜いても美味しいご飯の作り方はだいぶ練習しました」(福地氏)