夫に看取られたくない、夫の墓には入りたくない

長尾和宏著『男の孤独死』(ブックマン社)

長尾 経済的な理由や家庭崩壊をさせたくないという理由で、我慢しながら婚姻関係を続けていく夫婦も少なくありません。戸籍上の配偶者はいても、別居中で事実上独りの人もいます。夫にはどうしても看取られたくないという患者さんが、ウィークリーマンションを終の棲家にし、彼女の友達たちに看取られて亡くなったケースもあります。

 たとえ離婚をしなくても、夫への冷めきった気持ちに変わりない。あの世に行ってまで一緒にいたくない。そのため、夫とは同じ墓に入りたくないという奥さんもいます。

 介護は愛情がなければできませんから、愛情がなくなった夫婦の場合、介護状態になったら、施設に任せきりとなり、心の中で「早く死んでほしい」と願います。患者さんの奥さんから「先生、夫はいつ死ぬんですか」と聞かれたこともあります。

「亭主元気で留守がいい」のはホント

――熟年離婚を回避する方法はありますか。

長尾 定年後、奥さんから「うざい」と思われる旦那さんの典型は、趣味も友達もなく、一日中、家でごろごろしている、男尊女卑、亭主関白で命令口調、妻を束縛している人に多いようです。

 奥さんから見捨てられないためには、妻にストレスを溜めさせないようにすること。家にこもらず外出する、趣味を持つ、ボランティアでもよいので、社会と関わりを持つ、自分のことは自分でやる。アクティブに行動することで、自分のための健康維持にもなります。

 そして、ごく当たり前のことですが、元気なうちから奥さんを大切にし、それをきちんと言葉や態度で接する努力をすることが最も大切です。