福島県相馬市の先進的な高齢者住宅

 少子化の影響で、日本では高齢者人口の割合が世界最高となった。

 医療費、介護費用など社会保障費の負担増大もあり、高齢者が公的な社会保障サービスに頼らずに健康を維持できる方策が求められている。

 そこで、健康対策の実現震災からの復興のなかで、高齢者の健康対策を実現した例を紹介したい。

高齢者の健康を守る絶妙の工夫

 相馬市にある「井戸端長屋」は、高齢者向けの復興住宅で、合わせて5棟建設されている。住民の平均年齢は80歳を超える。特筆すべきは、コミュニティを保つ工夫だ。

 居住部分は台所、風呂が備えられている2DKの個室でプライバシーは保護されている。一方で、コミュニケーションを促す工夫が凝らされている。

 例えば、昼食を共有部分で取るルールとなっており、1日1回は顔を合わせる機会がある。また、洗濯機は共有スペースに配置され、部屋数よりあえて少ない個数を配置することでなど、細かな工夫が凝らされている。

 私は3年間毎月訪問し、健康相談を行っている。健康相談とは言っても、普段は世間話、昔話を聞くだけだ。とはいえ、この3年間いろいろなことがあった。

 亡くなった人もいたし、健康状態が悪化して長屋にいられなくなった人もいた。しかし、それよりもコミュニティが住民の健康を支える様子を数多く目の当たりにした。