つまるところ、日本の道路が左側通行になったのは英国の影響ではないのである。左側通行ということで、なんとなく同じ島国である英国に親近感を感じる人は少なくないだろうが、単なる偶然の一致に過ぎないというのが真相らしい。
世界のスタンダードは右側通行
とはいえ、世界の大勢は右側通行にある。国連加盟の主権国家193カ国のうち、現在でも左側通行の国は55国だ。これだけみても左側通行が少数派になっていることが分かるが、人口ベースでみればさらに少数派であることは歴然である。右側通行が世界のスタンダードであることは否定できない現状なのだ。
今年2018年は「明治維新150年」である。「国家百年の計」という観点からしてみれば、日本が1900年に左側通行を採用したことが果たして正解だったのかどうか考えざるを得ない。1900年の時点では、1950年代のモータリゼーションを予見できなかったのは仕方ないかもしれないのだが。
日本の道路交通規則を左側通行から右側通行に変更することは、社会的混乱をもたらすため、可能性としてはきわめて低い。右側通行が世界の大勢とはいえ、日本は島国であり完結した小世界であると考えれば、その必要性も高くはないだろう。ただし、左側通行は右ハンドル車を意味するのであり、グローバルビジネスの観点からいえば、かならずしも有利であるとはいえない。
社会制度の設計というものは、将来予測を踏まえて、よほど慎重に行わないと将来に必ず問題が発生する。左側通行の採用は、そんな事例の1つとして考えるべきだろう。