「審査で、全体としては“Aレベル”判定をいただいたのですが、ClearBoxをはじめとする社内の情報共有システムに対してはなぜか評価が低かったんです。私としてはこだわりも自信もあるシステムでしたから、理由を聞いてみました。すると、『これらのシステムは、河村さんが見たい情報を自分で見るために作ったのですよね』『現場の人たちが欲しいシステムを作ったわけではないですよね』と言うんですね。つまり、独りよがりなシステムだというわけです。言われてみると確かにそうかもしれないと納得せざるをえませんでした」

 そして、立て続けに2つ目の出来事が起きる。河村氏が信頼を寄せていた幹部社員が突然会社を辞めてしまったのだ。

「私の右腕でした。いちばん信頼して二人三脚でやっているつもりでした。ところが突然、辞めてしまった。彼から辞めたいと言われ話し合ったときに思い知らされたのは、自分は社員一人ひとりときちんと向き合っていなかった、社員のことを真剣に考えていなかったということでした」

 河村氏は2つの出来事を通して、「これまで経営者として『個人』を大切にしていなかった」「一人ひとりの社員がどう生きるかが理念に含まれていなかった」ことに気づく。それを機に、「一人ひとりのメンバーが主役になって、個人の強みを生かしたチームを形成する」ための変革に取り組んだ。目指したのはサッカー型の組織である。

 まず、「Team ONENESSが『心温まるカーライフ』を創る」という新しい経営理念を策定した。「組織」と「仕組み」と「個人」で「心温まるカーライフ」を創っていく、という思いを込めた。

 そして、特定の役職への責任集中を防ぎ、従業員全員に“主役”になってもらうため、店長の役職を廃止した。「何かを決めなければならないときは、従業員みんなで相談してもらうことにしました。全員の意見をもとに、最終的には営業、整備、フロントといった各部門のキャプテンに話し合って決めてもらいます。だから、会社全体で話し合いの量がとても増えました」

 河村氏は、サッカー型組織の特徴は「ボールを持った人が指示を出す役割を担う」ことだという。つまり、カワムラモータースでは全員が司令塔になるのだ。