そこで河村氏は、地方都市でディーラーが生き残っていくため、そして顧客の強いニーズに応えるため、「車が快適に使えるメンテナンス」を商品として提供していく必要があると考えた。

 こうして河村氏は「トラブルフリーの車をつくろう」というミッションを掲げ、持続的な成長に向けて事業と組織の変革に挑む。

 その過程で、同社の経営にとって大きな転機となる2つの取り組みがあった。それぞれについてみていこう。

カワムラモータースの2代目社長、河村将博氏

独自の顧客管理システムを導入

 第1に、全従業員が情報を共有する独自のデータベースシステムを導入したことだ。

 ホンダ車ディーラーは基本的に、ホンダが提供する伝票作成や顧客管理のためのウェブシステムを利用している。だが、カワムラモータースでは2007年より顧客管理用に独自のシステムを使っている。データベースシステム「FileMaker」(ファイルメーカー)上で動く顧客管理システム「ClearBox」(クリアボックス)である。システムを設計したのは河村社長自身だ。

「東京のディーラーで働いていた際、顧客管理システムを自分で作っていました。ホンダが提供しているシステムもあったのですが、自分にとっては使いにくかったのです。改善のリクエストに応えてもらうことも難しいので、自分でFileMakerを勉強して作ることにしました」

 河村氏はそのシステムをカワムラモータースに持ち込んだ。「車の販売、車検による売り上げと同じ額をメンテナンスで稼ごうとすると、きわめて高い頻度でお客さまの車をメンテナンスする必要があります。すると、とても手作業での管理なんてできなくなります。お客様が望んでいることに柔軟に対応できるようなITの『仕組み』が必要でした」