日本の働き方改革は、世界のトレンドと合っているのか。

日本と欧米の働き方

 日本政府は最重要テーマとして「働き方改革の実現」を掲げ、2017年3月に働き方改革実行計画を決定した。これに加え、過重労働など「ブラック企業」と呼ばれる労働基準関係法令の違反企業公表、また一方で景気回復、人手不足の加速など、働き方をめぐるさまざまな動きや状況の変化があり、大手企業を中心に知恵を絞っている。

 リクルートワークス研究所がフレキシブルワーク(柔軟な働き方)の研究に取り組み始めた10年前には、IT基盤が整っている大手通信会社がフィジビリティスタディー(実現可能性調査)で取り組むとか、育児や介護をしている女性従業員に限って在宅勤務を導入する、といった企業がいくつかあった程度である。しかしこの2~3年は、企業トップの本気度も高くなり、改革のスピードは倍速となり、次々に日本流の「新しい働き方」を生み出している。

 働き方改革の目的の1つとして掲げられることが多いのは、労働生産性の向上。企業が主に取り組んでいるのは、長時間労働の是正をはじめとした、「労働時間」「休暇制度」「働く場所」などの制度の見直しと、「テクノロジーの導入」である。

 多くの企業がまず着手するのは「労働時間」の柔軟化だ。日本では、導入しやすい制度として「フレックスタイム制」を取り入れている企業が多い。これは欧米諸国でも同様で、デンマークでは企業の約97%が導入している。

 また、法定労働時間を見ると、フランスは週35時間と短いが、ベルギーは週39時間、日本・米国・オランダ・スウェーデンは週40時間と、欧米では40時間前後を定めている国が多い。また、労働時間を法律で一律に定めずに労使間で協議して決定することを認める国もある。これも柔軟化の1つの方法だろう。

 実際、フレキシブルワークの進展度合いを見ると、これらの国では、各職場における労働時間の変更申請や、長期休暇の取得申請を簡略化するなど、フレキシブルワークを後押しする労働法改正は進んでおり、さらに自由化が高まっている。