大学は、そもそも何のためのものなのか。

 これまでの記事では、専門職大学・短期大学という新たな大学制度は創設されたものの、現存する専門学校からの転換や、既存の大学・短大からの移行を目指す動きは、それほど活発にはならないのではないかということを書いた。それは、既存の専門学校にとっても、大学・短大にとっても、専門職大学の制度は、参入障壁が高かったり、メリットよりもデメリットのほうが大きいと判断されるだろうと考えたからである。

 そうだとしたら、新たに創設された専門職大学は、いったいどこに向かうのか。最後に、これまでの記事を踏まえて考えてみたい。

「学術の中心」としての大学

 ただし、いきなり本題に入る前に、新制度について考える際には重要な視点であると思われるので、2点だけ、留意すべき論点について触れておきたい。

 1つ目は、前回の記事でペンディングにしておいた論点に関わる。それは、現在の大学・短大が、専門職大学・短大への移行を躊躇する理由には、単に移行することのメリット・デメリットの比較からということだけではなく、もう少し原理的な次元での“抵抗感”や“慎重論”があるのではないかということである。

 教育基本法は、2006年に改正された際、新たに第7条として、大学についての規定を追加した。そこには、以下のように記されている。

第7条 大学は、学術の中心として、高い教養と専門的能力を培うとともに、深く真理を探究して新たな知見を創造し、これらの成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するものとする。
 

 ここでは、大学教育が「専門的能力」の養成を行い、「社会の発展に寄与する」ことが奨励されているが、その前提には、大学が「学術の中心として」、「高い教養」を培うとともに、「深く真理を探究」する場であるという条件規定がある。