我が国の医師不足は深刻だ。さらに、西高東低の形で偏在している。
厚生労働省は来年の通常国会で医療法を改正し、この問題に対応しようとしている。
10月30日の読売新聞によれば、厚労省は都道府県の権限を強化し、医学部入学定員に地元出身者枠を設けるよう大学に要請できるようにすると同時に、地域の研修病院の定員を都道府県が決定できる権限を与えるらしい。
懸念される学生の学力低下
私は、このやり方に反対だ。短期的に医師の偏在を改善するかもしれないが、長期的には弊害が大きい。
医学部を志望する高校生は多いのに、定員を増やすことなく、大学の入学者を地元優先にすれば、実力のない学生が入学してくる。
また、卒業後は地元の医師不足地域に派遣される。若者は異郷を経験して成長するのは、古今東西共通だ。地元で生まれ、地元の大学を卒業し、地元に縛りつけられれば、成長のチャンスを失う。
医師不足の日本で病院は医師確保を巡って、激しく競争している。
経営経験のない退職した大学教授を院長に迎える病院が多いのは、医局から医師を派遣してほしいためだ。「病院経営は医師確保にかかっている」というのが、医療界の常識だ。
実は、医師不足地域とは、医師獲得合戦で負けている地域なのだ。