その「仕組み」が、ClearBoxである。顧客プロフィール、車の状況、保険の契約状況などを一元管理し、セールスタッフからメカニカルまで全員で共有するシステムだ。顧客の車一台一台を詳細に管理しているので、エンジンオイルやバッテリー、タイヤなどの交換時期が近付いたら、タイミング良く知らせることができる。

 またClearBoxには、顧客と接した際の現場での「気づき」を、従業員がくまなく書き込んでいく仕組みもある。「ピンと来ちゃいました!」と名付けられたこの仕組みは、顧客に関する情報共有はもちろん、顧客とのコミュニケーションや新サービスの開発に役立てられている。

 ClearBoxには、ユーザーインタフェースや機能などに関する、従業員からのさまざまな要望も盛り込まれている。要望があると河村社長が自らシステムに手を加えて改修するのだという。ClearBoxは、同社の最大の競争力であるきめ細かなサービスを生み出す源泉であり、まさに経営の骨格になっていると言っても過言ではない。

一人ひとりが主役になっているか?

 第2の大きな取り組みは、「組織のあり方」の変革である。

 河村氏は、「成果とは『事業戦略』と『組織風土』の掛け算である」という考えのもと、全社員が一体となる「ONENESS」(ワンネス)を組織理念として掲げて、経営変革に取り組んできた。しかし、その考え方には欠陥があった。

 カワムラモータースの経営は、河村氏が描いた戦略をいかに拠点や部門に展開していくかに主眼が置かれていた。河村氏は強力なリーダーシップで会社を引っ張ってきたが、その結果「1人のリーダーとフォロワー」という構造が出来上がってしまい、社員の「個人としての生き方」への視点がおろそかになっていたのである。

 河村氏がそのことに気が付かされる2つの出来事があった。1つ目は、2011年度の福井県経営品質賞知事賞を受賞したときの、審査チームからのフィードバックである。