周りの人間は、普段からの言動をよく見ている。

 インターネット上の記事で、興味深い「忖度」の違いを読んだことがある。その記事を記憶に基づいて再現すると、次のようなものだった。

部下は「忖度」するもの

 取引先企業を訪問して、早く着き過ぎてしまった社長御一行。同伴の部下が社長の気持ちを忖度し、相手先に電話を入れ、「1時間早く着いてしまったのですが、今からお伺いしてもよろしいでしょうか」と申し入れた。

 もう1つの事例。同じように早く着きすぎた社長とその部下。「早く着きすぎましたね。仕方ないので、どうにか時間をつぶしましょうか」と社長に提案する部下。

 どちらの方が望ましい部下か。社長にとって気持ちのよい部下は、前者だろう。しかし、会社の発展にとって望ましい部下は、後者の方だろう。

 前者の部下は、相手先企業の都合よりも、社長の都合を優先している。これは顧客を見ずに社長の顔色ばかり窺う部下ばかりに会社が変容している恐れがある。こうした企業に身を置く社長はさぞかし気分がよかろうが、会社の将来は心配になる。顧客を見ない企業が、発展するはずもないからだ。

 他方、後者の部下は、社長よりも相手先企業の都合を真っ先に考える習慣が身に付いているのだろう。1時間も予定を繰り上げることは、相手先企業のスケジュールを大いに狂わせる恐れがある。社長の機嫌よりも、相手先企業のことをまず思いやる習慣が部下に身についている証拠だ。