鳥井:希少がんセンターが立ち上がったのは、「希少がんの治療向上に力をいれていくべき」ということからでしょうか。
川井:その通りです。がんは種類にかかわらず大変な病気ですが、中でも希少がんの人たちは様々な面で不利な状況にあります。企業も大学も取り組むことが難しい。そんな困難な領域だからこそ、国立がん研究センターが真っ先に取り組むべき課題だと考えました。
しかし、一方では、希少がんさえよければそれでよいという、いわゆる「○○ファースト」というような考え方はしてはならないと思っています。まれであろうがなかろうが、がん患者さんの苦しみや願いに違いはありません。そのことを心に留めつつ、弱い立場の希少がんの患者さんと共にあり、その声を代弁する希少がんセンターでありたいと思っています。
「情報を届けたい」から始まったNPO・企業とのコラボ『希少がん Meet the Expert』
鳥井:希少がんセンターを始められてから、ご自身に変化はありましたか。
川井:いろいろな病気とその患者さんの存在に気がつくようになりました。それまでは「肉腫」という本当にまれな病気が自分の世界の全てでした。小腸がんや中皮腫など、肉腫以外の希少がんに関しては、その存在すらよく知らなかったんです。それが、希少がんセンターの活動を通して、さまざまな希少がんの患者さんの存在を知り、全ての希少がんに共通している問題に気がつきました。
鳥井:「情報が少ない」という点ですね。
川井:そうです。希少がんの患者さんにとっては、自分のがんはどのような病気なのか、どんな治療法があるのか、どの病院に行けばよいのか、そんな5大がんの患者さんにとってはあたりまえの基本的な情報すら手に入れることが難しい。「この情報格差を何とかしなければならない」と思いました。