臨床試験薬、アルツハイマー病に「目覚ましい」効果 研究

仏東部アンジェルビリエの老人ホームの廊下を歩く女性(2011年3月18日撮影、資料写真)。(c)AFP/SEBASTIEN BOZON〔AFPBB News

 私は整形外科医で、特に膝関節のスポーツ傷害、加齢変性疾患の治療を専門としています。そして臨床医として現在の治療の限界を超えようと、大阪大学で関節の再生医療の研究を行ってきました。

 「石の上にも3年」という諺がありますが、3年どころか10年以上の研究期間の後にようやく、私たちの軟骨再生研究が臨床応用されるための最後の関門である企業治験の開始に至りました。

 関節軟骨は関節の中で衝撃の吸収や滑らかな運動を可能となるように機能する組織(図1)ですが、血管や神経が入り込んでいません。そのために傷を受けても最初は患者さんに気づかれず、また自身の力で治すことができません。

 痛みなどの症状が出てきた時点では傷は大きく深くなり、これまで有効な治療法がありませんでした。そのために世界中で再生医療の研究開発がしのぎを削っています。

 私たちは関節内にある滑膜という膜の中からいろいろな組織に分化する能力のある幹細胞を取り出し、それを増幅させます。その細胞を用いて3次元の接着性の高い組織を作り出してそれを傷んだ軟骨表面に張り付けて治療します(図2)。


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 組織は移植後数分で移植部に安定しますので手術時間が大変短くて済むメリットがあります。

 基礎研究を臨床研究へ発展させる過程には、Death Valley(死の谷)が存在すると言われますが、そのとおりこれまでの道のりは苦労の連続でした。いろいろな方とのご縁、また偶然との出会いなくしては決してここにはたどり着けなかったと思います。

 今回はこれらの中で得た、研究成果の臨床応用へのポイントを私なりにお伝えしようと思います。あくまでも個人的な想いがベースにあるのでその点はご勘弁ください。特にこれから研究を始めようとする若い方々に参考にしていただけましたら幸いです。