「眠いけれど食べたい体」で起きているホルモン変化

睡眠不足と食欲の関係を探る(後篇)

2017.11.17(Fri)漆原 次郎
有竹清夏(ありたけ・さやか)氏。博士(保健学)。埼玉県立大学保健医療福祉学部健康開発学科検査技術科学専攻准教授。国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所で研究員・技師、また国立保健医療科学院/長寿科学振興財団でリサーチレジデントを務めたあと、日本学術振興会特別研究員となりハーバード大学医学大学院に留学。帰国後、早稲田大学スポーツ科学学術院助教、東京大学大学院教育学研究科附属発達保育実践政策学センター特任助教を経て、2017年7月より現職に。専門分野は臨床生理学、睡眠学、時間生物学。

有竹清夏氏(以下、敬称略) 「ペプチドYY」(PYY)や「グルカゴン様ペプチド-1」(GLP-1)といったホルモンです。

 PYYは小腸に多く分布するホルモンで、食欲を抑制する働きが知られています。今回の実験では、3.5時間睡眠でのPYY分泌量が、7時間睡眠と比べて有意に低くなっていました。つまり、3.5時間睡眠では食欲の抑制が効かない傾向になっていたのです。

 GLP-1も小腸から分泌されるホルモンで、インスリンの分泌を促進して、血糖値を下げる働きがあります。また、胃の内容物の排出を遅らせることで食欲を抑制する働きもあります。実験では、3.5時間睡眠でのGLP-1分泌量は、7時間睡眠と比べて下がる傾向にありました。どちらかといえば、食欲増進のほうに傾く結果となりました。

――他のホルモンなどの量の変化についてはいかがでしたか? たとえば、海外の研究では、睡眠不足だと食欲を抑制する「レプチン」の分泌量が減るという報告もあるとのことでしたが。

有竹 今回の実験では、レプチンの分泌量も調べられましたが、有意差は出ませんでした。ただし、逆に増えたりはしなかったので、矛盾はしない結果とはいえます。

長期の睡眠不足で肥満のリスクも

――実験では、被験者が起きている1時間ごとに、空腹感などの主観についても質問がなされたと聞きます。こちらはどうでしたか?

有竹 3.5時間睡眠のほうが7時間睡眠に比べて「空腹感」が有意に高かったり、「満腹感」が有意に低かったりといった時間もありました。「このくらい食べられるだろう」という主観でも、3.5時間睡眠のほうが多くなる傾向が見られました。これらの結果から、PYYなどの食欲抑制ホルモンの分泌が抑えられたことが、空腹感などにも影響を与えている可能性は考えられます。

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